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読書メモ:ゼロ秒思考(★★★)

前回に続き、マッキンゼーの方の著書。赤羽さんは、14年間マッキンゼーに勤められ、同社の120人体制突破に貢献されるとともに、主に韓国企業(特にLGグループ)の発展においても重要な役割を果たされたとのこと。

ゼロ秒思考  頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

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さて肝心の内容だが、言いたいことは非常にシンプルで、著者が推す「ゼロ秒思考」というのはなるほど確かにトライしてみたい方法であると思うものの、本の構成自体は非常に冗長で、一冊の本にしようとするがあまり無理に書いたのではとすら思うページが多い。冗長であるだけならまだしも、「ゼロ秒思考」が究極の思考ツールであると推すがあまりに、あれこれ様々なメリットを打ち出している結果、「なぜゼロ秒思考が必要なのか」という点ですら、ロジックの構成が甘いのではと思ってしまう(僕の頭が悪いのかもしれないが)。

例えば、第2章「人はゼロ秒で考えられる」の「時間をかければ考えが深まるとは限らない」の項はひどい。時間をかけることのデメリットについて語られてはいるが、肝心の「時間をかければ考えが深まるとは限らない」という主張をサポートするファクトは何一つ掲げられず、「そのような経験をした方は多いのではないだろうか」ということしか述べられていない。その上で、「時間をかけすぎるが内容が伴わない」⇒「個人としても成長しない」⇒「職を失うリスクが高まる」⇒「大企業ですら倒産のリスクが高まっている」⇒「成長できていないと再就職のチャンスも少なくなる」という、主題をかけ離れ、かつ相当ジャンプした主張にページが費やされている。

その他の点でも、著者のロジカルシンキング能力には根本から疑問を感じる。文中、「イチローはバッターが打った瞬間に全ての情報を判断し走り始めているはずだ」←「(なぜならば)0.5秒考えていたら、ライナーを地面スレスレでキャッチすることはできない」という主張があるが、0.5秒考えようが5秒考えようが、ライナーを地面スレスレでキャッチできるかどうかは、バッターが打った瞬間の守備位置とボールの着地地点との距離に大きく依存する。

本の主張がロジカルかどうかを通常そこまで気にはしないが、著者が戦略コンサルティング界の大ベテランを標榜しておられるということ、及びゼロ秒思考自体は非常に面白い取り組みなので、もったいないという思いもあり、長々と揚げ足取りをしてしまった。以下、簡単にまとめておく。

第1章:考えるためのヒント

  • 考えを文章に書くことが重要
    • 思考と言葉は直結している
      • 言葉に落とすことで、思考の曖昧さ(揺らぎ)を回避できる
      • 言葉に落とすことで、堂々巡りの空回り思考を回避できる
    • 正確・明確な言葉にしなければ人に伝わらず、リーダーシップもとれない

第2章:人はゼロ秒で考えられる

  • 現状認識・課題整理・意思決定を瞬時に行う「ゼロ秒思考」は誰でも実践可能
    • 時間をかければ考えが深まるとは限らないので、ゼロ秒でもいい
    • 実際、優れた経営者は瞬時に判断している
    • 誰でもゼロ秒で考える「メモ書き」を考え出したので紹介する
      • 人間は誰でも高い能力を持っている
      • いつも特定のテーマについて考え続け、仮説を持っていればゼロ秒で考えられる
      • 訓練すれば誰でも身につく
  • メモ書きでゼロ秒思考が身につけられる
    • 頭に浮かぶ疑問・アイディアを即座に書き留めることで、頭がどんどん動くようになり気持ちも整理される
    • メモ書きを3週間から1ヶ月続けると、頭にどんどん言葉が浮かび、アイディアが続々と出てくる
    • 更に数ヶ月続けると、瞬間的に全体像が見えるようになり、「ゼロ秒思考」に近づいていく。ものによっては、瞬間的に問題点が見え、課題が整理でき、答えが見えてくる
    • これらの効能は、もやもやを吐き出して形にするプロセスで頭を使っているということと、暗黙知が形式知化されることによるものである
    • メモ書きのやり方は以下
      • 横置きのA4用紙に書く
      • 1件1ページ
      • 1ページに4~6行
      • 各行20~30字
      • 1ページ1秒以内
      • 毎日10枚書く

※第3章~第5章はメモ書きのより具体的なやり方に関する記載のため省略