HAGAKURE

90%自分向けの読書・思考・勉強などのメモ(匿名のようで匿名じゃない)

読書メモ:シンプルな戦略(★★★)

仮にも戦略を専門にしていこうと決心したので、最初の記事はこの本の読書メモにしよう。

著者はマッキンゼーで長らくパートナーを務めてこられた山梨さん(1990年に36歳前後で入社、95年からパートナー。ちなみに大前研一さんがマッキンゼーに在職していたのは1994年までのようだ。そう考えると大前さんというのは本当に二時代ほど前、黎明期のコンサルティングを作ってこられた方だなあ)。

タイトルは「シンプルな戦略」となっているが、シンプル話に留まらず、「そもそも戦略とは」「意味がある戦略・ない戦略とは」「戦略をどうやって立てるか」を論じる結構本格的な著書だった。最初にコンサルやってた頃に読んでたら「あたりまえだなあ」で終わっていたかもしれないが、僅かばかりの事業会社経験を積んだ今だからこそ理解できる部分も多く、勉強になった。

そもそも戦略を生業にしているとは言っても、全然自分の中で型化されていない。いや、もちろんガチガチに型化できるはずはないんだけど、あらゆることに対してどういう思考法をとるか全く自覚がないので、好不調の波にもさらされがちなところには課題感を感じている。調子がいい時にはバシバシ斬れるけど、どの刀使ったか覚えてない、みたいな。

しかし、PARTIIで紹介されている「戦略策定の基本ステップ」にはあまり同意できず。マッキンゼーは本当にこういうステップで考えているのか?非常に積み上げ式の思考法であり、仮説思考・論点思考ではないと感じた。現時点での自分の考えとしては、「1.戦略目的の設定」が終わったら、「4.課題の抽出」をざっくりやって眺めながら、すぐに「5.戦略的方向性の創出」を仮説ベースで行い、その後に「2.境界条件の再定義」と「3.環境分析と洞察」をチェック的に検証し、以後1を除くこのサイクルを回して進化させていくというやり方がよいのではと思う。その方が境界条件にもとらわれずに発想もできるのでは。それに、特に「3.環境分析と洞察」って、課題なり打ち手なりの仮説があって初めてどういう切り口で見るべきかが出てくるのでは。マクロ環境をover allに見にいったら死ぬ。

同様に、「戦略アウトプットフォーマット」みたいなものにもあまり同意できず。いや、書き起こすこと自体はよいというかやるべきだと思うものの、このフォーマットは「基本ステップ」の各段階で考えたことの記入欄を並べているだけで、各ステップ間の有機的な繋がりが見えてくるわけでもないので、あまり工夫を感じないというか。わざわざ「フォーマット」とか言わずに、「各ステップで考えたことは言語化して残しておいた方がよい」ぐらいの主張でもよかったのではと思ったりする。

ステップの順番はさておき、個々の内容で書かれていることや、事例の話は参考になった。ステップの話にしても、いまの自分が理解できていないだけかもしれない。とりあえず、事例部分だけはいつかまた読み返そう(そこらへんは頭にあまり入っていない)。

読書メモ(抜き書きではない)

PART I:今、なぜシンプルな戦略が必要なのか

  • 戦略はシンプルであるべき(=WhatもWhyも明快であるべき)
    • シンプルであれば、戦略の肝やフォーカスがはっきりしている
    • シンプルであれば、皆に伝えやすく、力をまとめやすい
  • 戦略の三大基本要件として、最低限以下の問いに答えられる必要がある(3Cに対応)
    1. 顧客にとってうれしいことかどうか?
    2. それは他の会社と違うのか?
    3. 自社は儲かるのか?
    • なお、それぞれについて3つぐらいの論拠が示せるとよい(Jim注:何でもかんでも3つである必然性は全くない。コンサルタントの悪いくせだと思う)
  • シンプルな戦略の例
    • ユニクロ:独自の付加価値を持った目玉となる戦略商品をとにかく徹底的に最大限売る
      • これを現場に更に落としこむと、「ヒートテックを1億3,000万枚売ろう」となる
    • すき家:これまでの牛丼チェーンのお客さんとは違うセグメントを取り込む
    • ZARA:その年に流行っているものを売る。しかも少量生産で在庫は少なめにして売切御免にする
    • サントリー:世界市場で本気で戦えるグローバルな食品メーカーとしてのスケールを持つ
      • (Jim注:これらの戦略は大いに個社の事情に依存する(と、いうか当然だが個社の事情に立脚して戦略が立てられている)。サントリーの戦略は、一見すると戦略とは言い難く感じられるかもしれない(「我が社の戦略はグローバル展開です」というのは如何にもありがちな"考えられていない戦略"っぽいからだ)。しかし、同社の場合には決して"片手間グローバル"ではなく、国内飲料市場の飽和を大前提とした上で、子会社の上場・資金調達・海外企業M&Aという一貫した打ち手に繋がっている立派な"戦略"だと言える。ということだと思う)
  • しばしば戦略だと思われているが全然戦略とはいえないもの
    • 目指す頂のみ型:「北米市場でシェア5%を目指す(が、WhyもHowもない)」
    • 何でもかんでも型(Jim注:自分の経験からも、リスクをとってエッジを効かせる戦略を選ぶのは非常に度胸がいると感じる。「これに注力する!でもこれもおろそかにできないしこっちもやらないわけにはいかないから、結局全部やる」みたいなことを平気でやってしまう)
    • それでどうなるの?型
  • トップのリーダーシップに問題がある場合
    1. 戦略策定段階で総花的(リスクをとれない)※上記何でもかんでも型を経営者も回避できない
    2. 実行段階で徹底して実行できない(フォロー、信賞必罰、嫌われ役を買うetc.)

PART II:戦略構築の基本

  • 戦略構築の基本ステップ
    1. 戦略目的の設定
      • まず明文化した方がよい(意外と食い違う)
    2. 境界条件の再定義
      • OBや元社長のことば、みたいなものも境界条件としては存在し得る
      • 基本的に境界条件は緩める方向で考える
    3. 環境分析と洞察
    4. 課題の抽出
      • 戦略課題を構造的に捉え、クリスタライズする
      • それらの課題の単なる裏返しの解決策にならないよう、更に根本に潜む大問題1つにシンプルにアドレスするよう括りだす
    5. 戦略的方向性の創出
      • 複数の戦略オプションを検討する
      • 海外事例や歴史・スポーツ・芸術の知識など、幅が広いことがアイディアにつながる(リソースフル)
    6. まとめ上げ
  • 成長戦略における「広がりの軸」の例
    • 市場(地域)
    • 顧客(特性
    • 商品(機能・性能)
    • チャネル
    • 用途・使用機会
    • バリューチェーン
    • 提供物
    • 顧客ニーズ
    • 自社の資産や能力 etc.

PART III、PARTIV:特にメモるべき箇所なし